【体験記】面談演習

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「なんで僕が提案した資料を見てくれていなかったんですか?」
(そんなこと言われても知らんがな……)
「なんでこんな雑用しなければいけないんですか?」
(俺の上司からの指示やから、中間管理職の俺じゃどうしようもないって)
「じゃあ、この会社辞めます」
(どうぞ、どうぞ)

こんな感じで、終始、険悪な感じで面談演習が終わった。その後、研修の同じグループのメンバーと、面談演習の動画を観る。

「めっちゃ、あたふたしているし」
「明らかにイラっとした顔になっている」
「言っていることの筋が全く通っていない……」

自分の面接演習の動画なんて一人で観るのも嫌なのに、それを他の人と一緒に観るなんて……。まさに公開処刑だった。講師からの講評もひどいものだった。

「部下の気持ちに寄り添えていないです」
「部下にどうなってもらいたいかの意図が見えないです」

確かにその通りだと思った。一方で、実際の場面とは大きく違う状況に置かれているのに、ひどい講評を受けたことについては、モヤモヤが残った。

「普段から部下と密にコミュニケーションを取って良い関係を築いていれば、今回の面接演習のように、部下がいきなり怒ることもない。仕事をお願いする時も、意図をしっかりと伝えてから、お願いすればいい。部下との関係が悪い状態になった時の対応をシミュレーションするのではなく、そうならないようにどうすればいいのか、を考えた方がいいんじゃないのか?」

すっきりしない気持ちのまま、面談演習を含む、外部機関による教育研修は終わった。

そして、数年が経った。
人事部から、次のグレードへの昇格試験の対象者となったとの連絡を受けた。
昇格試験の内容を調べると、「外部機関が実施する研修で、ある一定以上の評価を取ること」というのが基準の一つにあった。その研修では、グループディスカッション、面談演習、インバスケットなどの演習をさせられ、総合的に点数をつけられるとのことだった。面談演習は、前回の演習が若干トラウマになっていたので、「また、あれを受けないといけないのか」と憂鬱になった。しかも、今回は昇格要件なので、面談演習でもマシな評価を得なければいけない。
いつものように、Webで対策方法を調べたものの、ピンとくるものがなかった。
かといって、書店に売られている面談が上手くいくための方法が書かれた本を読んでも、その通りに上手くできる気がしない。
「さて、どうしたものか」と悩んでいたが、答えは出なかった。

研修が数日後に迫ったある日、ふと「これを日常業務の部下との面談だと思うのがよくないのかもしれない。ただの面談演習だと割り切ってはどうだろうか」と思った。そこから、「ただの面談演習だと割り切って、うまくやるにはどうすればいいのか」を考えた。

「面談の相手役の人は、訓練されているから、必ずこちら困るような返答をする。感情的にはならない」
「面談演習なので、相手役は必ず何かの不満がある。相手の不満を見つけるゲームだと思うくらいでいいのかも」

このように、極力自分の感情をなくして、淡々とゲームをこなすくらいの気持ちで臨むことにした。

そして、研修当日。インバスケット演習の間に、面談演習が組み込まれていた。インバスケット演習を中断して、事前に与えられた課題を読む。

自分は生産部門の課長で、相手役は自分よりも年上のベテラン部下。会社の方針で、大規模な業務管理システムを導入することになった。しかし、部下は、従来のやり方がいいと思っており、システム導入に大きな不満を持っている。

「○○さんは、なぜ業務管理システムの導入に反対なのですか? どこが問題だと考えていますか?」
「今のやり方のメリット/デメリットは何ですか? 私は業務管理システムのメリットは△△だと思いますが、いかがでしょうか?」
「自分の仕事がなくなることが不安なのですね。現場のことがよくわかっている○○さんは業務管理システムの仕組み作りに関わってもらいたいのですが、いかがでしょうか?」

途中、相手役の言動に少しイラっとすることはあったけれども、極力感情を出さないようにした。
終始淡々と、
「相手の不満はなんだろうか?」
「なぜこのような考えに至ったのだろうか?」
ということを常に頭に置きつつ、それを聞き出すために質問するということを意識した。

結果的には、面談演習の内容は、相手への質問が8割、自分の主張2割くらいだったと思う。後日、研修のフィードバックレポートが送付されてきた。

「相手の考えを否定せず気持ちに配慮しながら対話を進めた。また部下の質問に対して、論理的に業務改善システムのメリットを説明していた」
「反面、伝達の仕方が固く、自然なやり取りが不足していた」

文面を読む限り、それほど悪くない評価だった。どうやら、質問することを心掛けるというのは、効果的だったようだ。おかげさまで、研修全体としての評価も悪くなかった。

この時は、面談演習だと割り切って、相手に質問して、相手を極力理解するというスタンスを取るようにした。ただ、最近は実際の業務で部下と面談する時でも、まず話を聞くということを意識している。面談演習のように不満をしっかりと話してくれるわけではないが、以前よりも相手のことを理解できるようになり、面談もうまくいくようになった。毛嫌いしていた面談演習だったが、結果的には実際の業務にも役に立った良い試験だったようだ。

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