仕事 PR

面倒なことほど早めにした方が良い

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

「ああ、面倒だな。他にやることもあるし、まあこれくらいでいいか」

仕事がたまってきて忙しくなると、ついつい手を抜きたくなる。
そんな時、私は雪だるまを思い浮かべる。
すると「手抜きをしても何も良いことはない。しっかりと取り組まなければ」と思い直す。

なぜなら、「面倒なことは雪だるま」だからだ。

雪だるまを作る時、最初は手で雪を固めるので、テニスボールくらいの大きさだろう。
ただ、これを雪の坂道の上に転がしていくと、ソフトボールくらいの大きさになり、バスケットボールくらいの大きさになり、あっという間にバランスボールくらいの大きさになるだろう。
私は面倒なことは雪だるまと同じで、自分が思っているよりも速く、加速度的に大きくなってしまうと考えている。

10年ほど前、私が初めて設計した製品が発売された。自分が大部分を設計し、自分で手を動かして評価をしたので、誰よりもその装置のことを知っている自信があった。

発売されてしばらく経ったある日のことだ。

市場部門の担当者から「ある施設で異常なデータが出ていると問い合わせがきています。問題ないか確認してくれませんか」と聞かれた。
早速、市場部門が入手したデータを確認してみる。

「確かに、少し変だな。装置内部に残っているログを確認した方がいいかな。でも、わざわざ施設に確認するのは面倒だな。まあ、この施設でしか発生していないし、たまたま発生しただけだろう」

そう思って、市場部門の担当者には「問題ないです」と返事した。

それから、1週間ほど経った。

再び市場部門の担当者から、「この前問い合わせた施設とは別の施設から、異常なデータが出ていると問い合わせがきました。本当に大丈夫ですか?」と聞かれた。

「大丈夫だと思いますが、一応確認します」

私はそう言って、市場部門から入手したデータを確認した。

「前の施設と同じで、少し変だな。でも、たまにしか発生していない。開発段階でも発生したことがあったけど、あの時は操作ミスだったし。やっぱり、問題ない気がする」

ちょっと気になるところがありつつも、しっかりと調査することなく「たまたまだと思います。様子見してください」と返事した。

それから、問い合わせもなく1か月ほど経った。

市場部門の担当者から、「以前、たまたま発生していただけと言っていたので連絡していませんでしたが、この前の2施設とは別の5施設で、異常なデータが出たと問い合わせが来ています。本当に大丈夫ですか?」と聞かれた。

「あれ? さすがに多すぎる。考えていたのと違うかもしれない。やばいかも」と青ざめながら、ようやく本格的に調査を始めた。

この時、社内ではすでに装置のトラブルの可能性が高いと認識されていて、大きな問題になっていた。
開発部門だけでなく、市場部門や品質保証部門などの関係部門から、「状況はどうなっているのか?」、「原因の追究と対策はいつ終わるのか?」といった問い合わせが、毎日のようにきた。
精神的にも体力的にも参りながら、関連部門への問い合わせ対応と調査を進めた。
他の開発メンバーも巻き込んで、毎日早朝から夜中まで、必死になって調査した。

2週間が経った時、ようやく原因がわかった。

そこから、2週間は関係部門への報告、顧客に訪問して謝罪と説明。
本当に大変な1か月だった。

はじめの問い合わせの時に、施設から装置ログを入手し、顧客にヒアリングし、不具合が起きた装置をしっかりと調査していれば、原因が突き止められていた可能性が高かった。
そして、この時点で原因をつかんで、市場にアナウンスしていれば、ここまで大事になっていなかっただろう。

この時ほど、「なぜあの時、手を抜いてしまったのだろうか」と後悔したことはない。

感覚的には、はじめの問い合わせの時にしっかりと対応していれば、精神的にも、体力的にも100倍くらい楽に対応できた気がする。
まさに面倒なことが雪だるまのように、加速度的に大きくなっていった感じだ。

このような手痛い失敗をしてから、これまでの仕事に対する取組みを振り返ってみた。

後輩への指導をしっかりしなかったために、何度も同じ間違いを繰り返させてしまい、その都度、注意しなければなかったこと。

他部門との調整で背景をしっかりと説明しなかったために、相手が混乱して、やり取りに時間がかかったこと。

はじめに手を抜いたばかりに、想定以上に大変になってしまった事例が多くみられた。

「防げるはずのことなのに、わざわざ自分で仕事を大変にしている。なんとかしないと」

それからというもの、「ああ、面倒だな。手抜きしたいな」と思った時、「手を抜くことで面倒が雪だるまのように増えるぞ」と自分に言い聞かせるようにしている。

すると、あの時の痛い失敗が思い起こされて、「今はしんどいけれど、手を抜いてもいいことはない。しっかりと取り組もう」という気になる。

このようにすることで、昔に比べると随分と手戻りなく仕事を進められている。

「面倒は雪だるまだ」

これは私が手痛い経験から学んだ、仕事をする上で大事な教訓の一つだ。