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苦しみながらも超大盛ラーメンを食べ続ける理由

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「もう無理。何も食べられない」

「しばらく、食べたくない」

「なぜ、懲りずに注文してしまったんだ……」

皆、口々に言う。

会社の同じ部署に私と年の近い人が3人いる。

全員40歳を過ぎた立派なおじさん達だ。

私を含めた4人は出身も趣味も違うけれど、ある共通の目的を持った者同士なのだ。

それは数か月に1回、仕事終わりにラーメンを食べに行くことだ。

しかも、ただのラーメンではない。

超大盛のラーメンを食べるのだ。

どんなラーメンかというと……。

背油しょうゆの濃いスープ。

器の上面ギリギリまで詰め込まれた太麺。

富士山を思い起こさせる、器に山盛りにされた、もやしときゃべつの炒め物。

さらに炒め物を覆い隠すように、薄切りの焼いた豚肉がてんこ盛りで載っている。

食べ盛りの男子学生ならともかく、食欲が落ちてきている40代のおじさんたちが注文するメニューではないのは確かだ。

店は繁盛していて、どの曜日に立ち寄ってもお客さんは入っているのだが、この超大盛ラーメンを食べている人は見たことがない。

そんなラーメンを4人のおじさんたちは注文するのだ。

しかし、先ほど書いたように、このラーメンは「普通」のラーメンではない。

数年前に初めてこのラーメンを食べた時は、終盤がかなりきつくて、何とか詰め込んで食べたという苦い経験があった。

もう、こんな辛い経験をしたくない。

そう思ってから、このラーメンを食べる時にはしっかりと作戦を練ってから、食べることにしている。

これまでの経験を活かし、今回は「事前準備」と「食べ方」の2つの作戦を立て、超大盛ラーメンに臨むことにした。

ラーメンを食べに行く前日から、1つ目の作戦である「事前準備」を実行する。

これの目的は、ラーメンを食べる時にいかにベストの体調を作るかということである。

前日や当日の食事は脂っこいものは避け、お酒を飲みすぎないようにして、胃腸を整える。

当日の昼食はラーメンを食べるまでにお腹が空くように、消化がいいうどんを食べた。

もちろん、間食もしない。

普段は仕事中に小腹がすくと、チョコレートやせんべいなどのお菓子を少し食べるのだが、この日は食べなかった。

また、体力勝負になるので、寝不足にならないようにも気を付けた。

前日の夜は、できるだけ早く布団に入るようにし、寝る前にスマホの画面を観ることなくすぐに目を閉じて眠った。

こうして、体調を整え、ラーメンを食べる前にはしっかりとお腹が空くようにした。

事前準備は万端だ。

仕事を終え、いよいよ4人でラーメン屋に向かう。

そして、当然の如く、全員、例の超大盛ラーメンを注文した。

ほどなくして、ラーメンが到着した。

いよいよ、2つ目の作戦である「食べ方」を実行する時だ。

以前は、盛り付けてある順番のまま食べた。

はじめに豚肉を食べて、もやしときゃべつの炒め物を食べて、そして最後に麺を食べる。

この食べ方をすると、食べた分だけ減っていくので、あとどのくらいで食べ終わるのかがわかりやすい。

しかし、終盤になりお腹が膨れてきた時に、大量の太麺を食べることになる。

これは結構きついのだ。

そのため、今回は別の食べ方を試してみた。

麺の上に盛り付けてある順番ではなく、胃にずっしりとくる食材から食べる方法だ。

もやしときゃべつの炒め物と豚肉はいったん別の器に移す。

そして、時々豚肉を食べながら、最初に麺を食べきる。

その後、別の器に移していた、もやしときゃべつの炒め物をラーメンの器に戻して食べる。

お腹が空いている時に麺を食べるので、いいペースで食べることができる。

しかも、脂っこい豚肉をお腹に余裕がある時に食べるので、それほど苦痛ではない。

なかなかいい食べ方だと思ったのだが、大量のもやし炒めを食べるとなると、さすがに飽きる。

しかも、スープがだんだん薄くなってきて、味があまりしなくなるのだ。

この点は次回への反省点である。

そんなこんなで、苦しみながらも今回も無事食べ終わる。

だが、これで戦いは終わらない。

21時にラーメンを食べ終わって、そこから家に帰り、寝る準備が終わって、ベッドに入るのが1時頃になった。

4時間以上も経っているのだが、胃の中のラーメンは消化しきれていない。

そのため、寝ようと思いベッドに横たわると胃の重みで苦しくなり、なかなか寝つけなかった。

いつもなら、すぐに眠れるのだが、この日は30分以上苦しみながら、ようやく眠りにつけた。

これで戦い終了だ。

ここまで読んでいただいた皆様は「こんなに苦しい目にあってまで、なぜ食べるのか?」不思議に思われるかもしれない。

味が美味しいからなのだろうか?

いや、違う。

確かにおいしいのだが、ここの超大盛ラーメンよりもおいしいラーメン屋さんはいくつかある。

やっぱり、量を食べたいのか?

いや、違う。

さすがに過剰である。体に悪いと思えるくらい食べ過ぎの量である。

では、何か?

私たちにとって、超大盛ラーメンを食べることは東京ディズニーランドに行くようなものなのである。

つまり、魅力的な非日常の空間をおもいっきり楽しんで、日ごろのストレスを発散しているのだ。

40歳も過ぎればいい大人になったと言われるが、時々はパーッと遊びたくなるのだ。

しかし、皆、使えるお金や時間は多くない。

だから、大盛ラーメンを食べに行くのだ。

4人のおじさんが、それぞれ自分たちの知力と「胃」力をフル活用して、普段目にすることがない大盛ラーメンを食べきる、というゲームをしているようなものなのだ。

だから、次はもっと楽に、おいしく食べるにはどうしたらいいかを考えるし、食べ終えた時、苦しいお腹を抱えつつも、皆でクリアした充実感が得られている。

私たちにとって、時間もお金もほどほどで、こんなに楽しめるイベントは他にないのだ。

だから、数か月後、またいつものメンバーと大盛ラーメンを食べに行くのだろう。

そして、また冒頭の言葉を繰り返すことになるだろう。

でも、楽しいから止められないのである。